何とか残したい!・・・ソメイヨシノ大径木の保全

改築にともなうソメイヨシノ大径木の保全・・・

このソメイヨシノの大径木はもともと古民家の中庭にありました。
しかし、土地が売り払われ、新たに事業所への建て替えが計画されるなか、通常ならこの木も撤去されていたことでしょう。
ただ、このサクラの存在感にオーナーがおおいに感銘をうけられました。
「何とか残せないものか?」
との意向を受け、樹木保全を兼ねた新たな作庭に取り掛かりました。・・・

before

古い建物を撤去。サクラだけが残る・・・

サクラまわりは木の保全を最優先とし、できるだけ建物を離したり、動線(通路)も木の根系保全のため一部浮き橋状にしています。枝葉は建物にどうしても干渉する部分だけ最小限に切除しました。

 

まわりの作庭作業ののち、最後にサクラの樹勢回復処置をしています。
建築工事に伴う覆土の除去や、土壌改良、圧縮空気注入による土壌の膨軟化、樹木活力剤の土壌灌注等を行いました。

 

それでも建物解体や建築作業による木へのダメージは少なくないと思われ、その後いくらか枯れ下がりが見られました。定期的に樹勢回復処置をしながら回復を見守っていきたいと思います。

この木は立派な大径木ではありますが、もともとずい分と幹が傷んでいて、痛々しい状況でした。
過去の無造作な強剪定が原因なのですが、今まであまり大事にされてこなかった木のように感じます。

ただ、新たなオーナーの保全への熱意、愛情は強く、これからは大事に見守られながら少しでも長く生き延びてほしいものです。

 


以下、樹木調査簡易報告より(抜粋)

このソメイヨシノはよく観察すると、3株ないし4株の「合体木」と思われます。(スケッチ図示参照)
4株のうち3株(A、C、D)はすでに激しく腐朽が進んでいて樹形を完全に崩しています。実際には残りのB株だけで現状の大きな樹冠、樹形は形成されています。
腐朽した3株の現状の腐朽は、過去(工事以前)の無造作な大枝の切除がその大きな原因ですが、あまりにも腐朽が激しく、今後、さらなる腐朽を完全に防ぐのは難しいと思われます。
(ただし、下部に新たに生育旺盛な新梢が数本出ているので、これを大事に育成することで長く維持できるのではと思います。)(略)
今後の保全方針としては、一部に腐朽は見られるものの、比較的健全なB株を中心に保全を図っていくことになります。
それには工事によるダメージからもまだ回復していないと思いますので、定期的な樹勢回復措置が望まれます。(略)


(樹木医、樹木診断・治療、大阪)

 

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