衰弱したクスノキ・・・ストレスを受ける都市の樹木たち

とある事業所(工場)の正面玄関前に大きく枝を広げるクスノキがありました。遠方からも視認できるほどの堂々たる樹冠で、事業所のシンボル的な存在の樹木です。・・・

決して大木、老木というわけではないのですが、植樹後ほとんど無剪定で放置されていたようで、伸び伸びと枝葉を 広げてきたようです。

2年前、近接する建物にかかる枝を中心に主幹の上部を大きく切除されたようで、それ以来急速に樹勢が衰えてきたとのことです。・・・急激に大枝を切除されたことで活力低下を招き、夏季の少雨乾燥などの天候不良が引き金となって衰退が顕著に現れてきたものと推察されます。

近年、特に昨年などは府内のあちらこちらでクスノキなどが夏季に異常に落葉する事例が相次いでいました。これらには特に病虫害の痕跡もなく、主原因は夏季の高温乾燥期において過度に水ストレスを受けたことによる生理障害ではと考えられています。・・・
当該樹木も全落葉まではしていませんが、タイミング悪く強剪定でダメージを受けたところに夏季に水ストレスを受けて落葉、衰弱していたようです。

切除された主幹上部を観察すると、剪定位置が間違っていることもありますが、切り口から樹皮が枯れ下がっているものが多いようです。また切除された枝葉を取り戻すかのように盛んに徒長枝が多数伸びてはいるもののどれも弱々しく、樹勢の衰えが顕著です。

作業は現場に高所作業車を入れ、枝先を一本一本丁寧に処置し直しました。

樹皮の癒合組織が巻き込みやすいよう切口を丁寧に切り戻し、切口を殺菌処置。また、樹形全体が完全な片枝になりバランスが悪くなっていましたので、枝先を最小限に切り戻しました。
さらに、樹勢回復のため土壌に樹木活力剤を加圧灌注しました。・・・

都市の過酷な環境に生きる樹木たちにとって、近年の夏季を中心とした天候不良は大きなストレスの要因となっているようです。そのような樹木に対して強剪定や根の切除などの急激な改変には特に注意が必要で、人が考える以上に樹木に大きなダメージを与えてしまうようです。・・・

 


(樹木医、樹木診断・治療、大阪)

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