覆土の悪影響・・・危険木になった園庭のマルバヤナギの大木

マルバヤナギ(ヤナギ科ヤナギ属) 落葉高木

園庭のマルバヤナギの大木

保育園の広い園庭の一角に「マルバヤナギ」の大木が数本あります。

かなりの大木で、なかなかの存在感です。・・・マルバヤナギはこの辺りの河原にも自然に多く生えており、大木になるものが多いようです。いわゆるヤナギのイメージとは違って楕円形の葉を持ち、新芽が赤くなることから別名「アカメヤナギ」の名もあります。

覆土(埋め立て)されたヤナギの根元

最近になってこれらの木々の衰弱が顕著になってきました。・・・

原因ははっきりしています。

もともとこれらのヤナギは園庭に隣接する竹林内にあったものですが、数年前に園庭の拡張工事を行い、竹林の一部を伐採して埋め立てたようです。その際、ヤナギの周りにも安易に土を入れてしまい(覆土)、もともとの地面より30~50cmほど高くしてしまったようです。・・・

園庭としては広くなりまた木陰も増えて喜ばしいことばかりだったのですが、結果的には大きな問題を抱え込むことになってしまいました。

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オビカレハの天幕。薬剤で多くは死んでいるが、一部は繭になっている。

木には徐々に異常が現れていたものと思われますが、最近になって顕著になったようです。・・・

まず、食葉性害虫が多発しだしました。

虫糞の落下がおびただしく、毛虫自体も園児の頭上に落ちてくる。・・・

二月ほど前、急きょ薬剤による駆除を依頼されて駆けつけました。枝先のあちこちにオビカレハの巣(天幕)が見受けられます。

木が大きすぎてなかなか思うように噴霧しきれませんが、ハシゴをかけて木に登りながら散布。とりあえずは虫害はいったん収束したようでした。・・・


 

その後、枯枝の落下や枝折れが顕著になりだしました。・・・

枝の枯れ下がりが確実に進行しているようで、園児の安全性を考えると放置できません。

高所作業車による枝おろし剪定

根本的には、覆土した土壌を撤去する必要があるのですが、園としても大がかりな予算は確保できないようで、最悪枯れてもしかたがないという判断のようです。・・・ヤナギという樹種を考えればしかたないのかもしれませんが残念な思いがします。・・・

取り急ぎ、安全確保のため枯枝の落下を収束させてほしいとのことで、剪定をして樹冠を縮めることにしました。・・・

高所作業車を入れ、枝おろしを行いました。

高所に登って枝先を確認してみるとやはり枝先から枯れ下がりが見られました。覆土害の典型的な症例です。しかも、穿孔性害虫(ヒメボクトウ)が多く喰い込んでおり、これが枝枯れをさらに加速させていることがわかりました。

ヒメボクトウの幼虫。集団で枝の中に穿孔食害している。

枝折れ箇所。ヒメボクトウによる穿孔被害。

樹木自体の樹勢が衰えると、病虫害を招きやすくなりさらに悪循環に陥るものです。・・・

食害されている枝は極力切除してしまい、残った穿孔痕には薬剤を注入して駆除を行う。さらに切除した枝の切り口には癒合剤を塗布。・・・

 

・・・・・・・

たとえ悪気はなくても、人の安易な改変で魅力的だった大きな木がたちまちこのような「危険木」になってしまいます。・・・残念ですが、どうか樹勢を取り戻してほしいと願います。・・・


(樹木医、樹木診断・治療、大阪)

 

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